57 クリスマスの悪夢
僕がまだよちよち歩きの大学3年生だったころ、
今では考えられないことなんだけど僕にも彼女がいました。
世間一般で良く使われる”ラブラブな状態”で迎えるクリスマス。
もうはりきるしかありませんよね。そうですよね。
みんなはりきってますよね。
いきなりなんで何なんですけど僕本当はロマンチストなんですよ。
彼女には「クリスマス?はぁ??何わけわかんねぇこと言うてるの?
真言宗よ俺(言い訳に良く使われる)あんなもんキリスト教かぶれの
やつがやる行事やんけ!プレゼント??はぁぁ???
俺まじ金ねぇんだけど・・・学生さんはお金がないって良く言うやん
(当時のCMより)」とか言っておいて、
バイト代で密かに指輪(ブルガリB-zero1)なんぞを
購入していたわけですよ・・・彼女に内緒にしておいて
喜ばせたろうって感じですね。
半年くらい前の買い物の時”この指輪かわいいよねぇ”とか
彼女が言うの聞いてたんですよね。
彼女の指は10号なんだってのもその時小耳にはさんでた
わけなんですよね・・・・・・・
クリスマスイブの日、ガラにもなくシャンパンなんぞを購入しまして、
どっぷりクリスマスマジックに嵌り込んでおります・・
シャンパンの酔いが少しずつ周り始めたころ、
”はいプレゼント・・・・内緒で買っちゃった・・・指輪だよ・・
前ほしいって言うてたやつ・・うん、がんばっちゃった・・
はめてみてよ・・うん良く似合うよ・・”
喜びましたよ。そらもうこいつ壊れるんじゃねぇの?
いやむしろ壊れてんじゃねぇの??ってくらいの勢いでしたよ。
目うるうるさせて”ありがと”って言う彼女はとてもかわいらしく、
僕達は甘い夜をすごしました・・・・・・幸せの絶頂です・・
次の日 軽く二日酔いぎみの頭を抱え起きてみると
隣にいるはずの彼女がいません、どうしたんだろう??
と思いながら僕は起きあがり、とりあえずトイレに向かいました。
・・・台所に彼女はいました・・・・・泣いてます・・・・・・
僕 ”どないしたん?”
彼女 ”ん?何でもない・・・・・・”
僕 ”ほな何で泣いてるんさ・・・・・”
彼女 ”泣いてないよ・・・・”
僕 ”いや どう見ても泣いてますやん・・・・・”
彼女 ”泣いてないって・・・・・”
僕が近寄ると彼女は手を後ろに隠しました・・何かあるな・・・
僕 ”・・・・・・見せてみ・・・”
僕 ”・・・・・・なんやこれ・・・・”
そこには指輪とその先に紫の芋虫がいました・・・
いや見事に変色した彼女の薬指なんですけど・・・・
彼女 ”むくんじゃったみたい・・・・・”
僕 ”大丈夫なん?”
彼女 ”大丈夫・・・・・”
僕 ”大丈夫なわけないやん(なら聞くな)紫やん・・・・
ていうかどっちかっていや どす黒いやん
デストロイヤーみたいになってるやん!(稲中卓球部の影響)”
彼女 ”いいからほっといて(泣)・・・・・”
僕 ”あかんやん このままほっといたら薬指 壊死してまうて・・・
切らなかんなってまうって・・・・指落とすなんて・・
極妻やないねんから(偏見)・・・・・”
彼女はどうやら洗剤で滑りを良くして 取ろうとしてたみたいです・・・
僕 ”ちょっとやらしてみ・・・・”
力を入れるとそれこそプチっと指が逝ってまいそうです・・・・・・・
僕 ”そや お湯につけよ!そしたらむくみ取れるって!!”
彼女 ”ごめんね・・・・・”
僕 ”ええって・・気にせんといて・・・・”
彼女 ”ごめんね・・・・・”
彼女はもうごめんね以外の言葉をわすれてしまったみたいでした・・・
速攻ポットでお湯準備し、彼女に手をお湯につけさせました・・・・
どうやら想像以上の激痛のようです・・・・・・・
薬指はますます変色し、まがまがしさを増していきます・・・・・
僕 ”・・・・病院行こか・・・・・”
彼女 ”ごめんね・・・・・”
病院行きました・・・・・
お医者さん”あら ひどいねぇ・・・・・”
僕 ”これこれこういうわけなんですよ・・・取れますかねぇ??”
お医者さん”むくんじゃったんだねぇ・・
かわいそうに(あわれみ??)・・・”
お医者さん彼女の手を見て 僕に向かって
お医者さん”あぁ指輪小さいねぇサイズは合わせて買わないと・・・・”
僕 ”そうですね・・(余計なお世話じゃぼけー!!
クリスマスプレゼントってばればれじゃん!!
あぁそうさそうさそのとうりさ!
彼女の指より明らかに小さいさ!!
だから何やっちゅうねんぼけー!!お前に言われる前から
わかってるっちゅうねん!!何で俺はクリスマスから
病院なんぞに来なかんねん!ほいで説教かい!!
あんたに何がわかるっちゅうねん!!
必死にバイト代ためて買ったっちゅうねん!!今
日は映画見に行く予定やったっちゅうねん!!
ええからおっさん取ってくれや・・・
頼む。はよしてぇや泣くよ・・泣いちゃうよ・・・)”
・・・・・・・結局、病院でも取れませんでした・・・・・・
病院の目の前には消防署があります・・・・・・
お医者さん”そこの消防署行くと切ってくれるから・・・・・”
僕 ”はい、ありがとうございました・・・
(やはり切るのですか・・・それしかないのですか・・・)”
彼女 ”ごめんね・・・”
僕 ”行こっか・・・・・・”
消防署に行きました
切りました・・・・・指輪切りました・・・・・
ブルガリのB-zero1はただのプラチナの塊へと変貌いたしました。
一日の命でした・・・短い命でした・・・・僕誓いました・・・
もう指輪あげない・・・・なんて言わないよぜったい嘘嘘ほんまほんま。
(羊男)
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